日本で長年、英語教師として多くの生徒さんと向き合ってこられた女性が、退職をきっかけにカナダの大学へ短期留学をされました。
「これまで頑張ってきた自分に、ご褒美をあげたいと思ったのです」そう穏やかに話してくださった言葉が、とても印象的でした。
英語教師としての豊富なご経験に加え、学生時代には留学もご経験されているため、英語力に大きな不安はないと思います。しかし、リタイア後に数ヶ月間海外で生活し、現地の大学に通うという選択は、決して当たり前のことではないと思うのです。
私自身、で何度か彼女にお会いする機会がありましたが、そこにいたのは「退職後」という言葉から想像する姿とは違い、好奇心にあふれ、毎日を前向きに楽しまれているとても素敵な女性でした。その姿は、年齢に関係なく、新しい一歩を踏み出すことができるということを私達に教えてくれているような気がします。

近年、シニア留学や大人の女性の留学に関心を持たれる方が増えています。子育てやお仕事が一段落し、「これからは自分の時間も大切にしたい」と感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
このページでは、そんな彼女の留学体験について、インタビュー形式でお話を伺いました。留学を決めたきっかけから、カナダでの大学生活、実際に感じたことまで、率直な言葉で語ってくださっています。
これから留学を考えている大人の女性やシニア世代の方にとって、きっと参考になり、心強いヒントが見つかるはずです。

Q1.今回、留学をしようと思われたきっかけを教えてください。
40年間英語教員としての勤務を終え、3人の子どもを育てながら頑張った自分へのご褒美として海外で大学生活を送りたいと思ったから。カナダ・バンクーバーを選んだのは、(若いころアメリカでの留学経験があるので)どこかアメリカ以外の英語圏で気候が温暖でゆっくり過ごせる国がよかったから。ある程度の英語力はあったので、語学研修ではなく正規の大学授業の聴講を行った。一年間の聴講資格は獲得したが、予算の都合と残された家族のこともあり、夏季集中講座を中心とした7月から9月の3か月の留学を選んだ。

Q2.実際に大学で授業を受けてみて、どのように感じられましたか?授業の内容や難易度、キャンパスライフについて感じたことなどをぜひお聞かせください。
大学の講座スケジュールの関係で、自分が専門としてきた国際関係論ではなく社会心理学を専攻した。授業は楽しく語学力の面ではさほど問題はなかったが、困ったのはデジタル機器の操作。思った以上に授業のITC化が進んでおり、デジタル教科書、PCやスマホのアプリを使った授業には大変戸惑ったが、周りの若者にサポートをお願いすることによって乗り切り、それが若者との交流の糸口となり、授業以外での交流にもつながった。
授業以外での行事にも積極的に参加することが大切で、そのためには留学前の準備が鍵。最近はホームページやインスタグラムで大学のイベントやクラブ活動の情報を得ることができるので、事前にクラブ責任者にメールを送って連絡をとっておくと、現地でのイベント参加や、交流がスムーズになります。(私が連絡を取った団体は「UBC日本人会」「国境なき医師団支援会」「UBC Thunderbirds」 (大学のすべてのスポーツクラブの総括)」「政治学専攻学生会」。

UBC在籍中は、「UBC日本人会」の交流会、「国境なき医師団」でアフリカのコンゴ共和国で活動をされたUBC病院の医師との交流会にも参加した。UBCアメリカンフットボールの試合に熱狂したり、学生生活を思いっきりエンジョイした。また私の経歴に興味を持った政治学専攻学生会から単独インタビューを申し込まれ、その様子がPodcastで流されたことはこの留学最大の思い出!

Q3.留学生活の中で、楽しかったことや困ったこと、印象に残っていることはありましたか?
最大の収穫はいろいろな人と交流できたこと。ともかく積極的に話しかけ「チャンスはモノにする」気持ちが大切!JPBridgeの岩井さんを通じて現地の日系の方とも知り合えた。偶然の出会いもあった。UBC内にある新渡戸稲造ガーデンという日本庭園に行ったら、たまたまその日庭園のボランティアガイドをしていた方と庭園に興味を持ちガイドツアーに参加していた方(後でわかったことであるがUBCの非常勤講師)と連絡先を交換したその後も、UBCのカフェで会ったり、ガイドさんが日本に来た際は京都で会ったりと交流を続けた。
困ったこととしては・・・車がなく移動、特に買い物には不便を感じたことくらい。しかし、UBC大学生はバス乗り放題のパスがありそれを利用し、買い物にもバスで出かけた。また後述するが、親切な大家さんがご自分の買い物に行く際に声をかけてくださり、日本食のお店にも連れて行ってもらった。車がなく買い物が不便なことは、むしろ物価が高いバンクーバーでの節約につながり、またキャンパスも広くバスを利用しても毎日歩く距離が多くなったが、これも健康にもつながったと思っている!

Q4.滞在先はいかがでしたか?心地よく過ごすことはできましたか?
身体が少し不自由で運動制限がある私は、滞在先にも制限がありました。つまり階段を使う部屋はダメ(上層階ならエレベーターが必要)、また若者との相部屋やシェアハウスはおそらく無理等。そんな私にぴったりの滞在先を岩井さんに探していただきました。日本人のご夫妻のベースメント(地階フロアー)です。半地下ということもあり採光が少なめでしたが、それ以外は大満足!(同じようにベースメントに住んでいる学生の中には、夏は日差しが強烈だからこれくらいで十分という人もいた。)自炊することもでき、バスタブのあるお部屋、ほぼ一人で使えるトイレなどプライバシーはバッチリ!
大家さんは親切で、必要な時はいつでも手を差し伸べてくださいました。帰国の朝、大家さんとご一緒に撮った写真は、「2025夏〜カナダ・バンクーバーの思い出」という帰国後作成したアルバムの最終ページを飾っています。

Q5.滞在中にはたくさん旅行もされたそうですね。思い出に残っている旅のお話があれば、ぜひ教えてください。
バンクーバー滞在中の主な旅行
①2泊3日で州都のビクトリア
B.C州の州都でもあり、ブッチャートガーデン、州議事堂、エムプレスホテルなど見どころ満載のビクトリアはおすすめの観光地。ビクトリアヘはバンクーバーから日帰りツアーも出ているが、片道4時間近くかかるのでちょっともったいない、最低でも1泊したい街です。

②4泊5日でアメリカ、シアトルへ
スペースニードルやチフリガーデンなど名所だけでなく、レーニア山国立公園が圧巻!国立公園を効率よく回るには現地ツアーがおすすめ。シーフードも美味しい。シアトルはバンクーバーからも近くおすすめです!

③7泊8日でアメリカ、カリフォルニア、サンタバーバラ
大学時代ホームステイした時のホストファミリー宅に再度お邪魔。40年間で5度目の訪問。コートハウスやミッションなど名所を訪問しただけでなく、ホストファミリーと旧交を温めた。カナダとアメリカは近く、このようなことも可能です。

④5泊6日、10月の紅葉の見頃を狙ってモントリオール・ローレンシャン高原へ。
北米のパリといわれるモントリオールや鮮やかなローレンシャン高原の紅葉。天候にも恵まれ最高!ただし、日本出発前に予約をする際には紅葉の見ごろの時期も天候もはっきりとは分からず、運を天に任せるしかない!(予想可能時期まで待っていたらツアーは売り切れることもあります!)

⑤バンクーバーから2,3時間で行ける名所ウィスラーへ
ウイスラーはツアーを利用しました。途中の観光名所にも案内してくれ、効果的に回れるのでかなりおすすめです。

Q6. 数月カナダに滞在されて、どのようなことを感じられましたか?国や人々、習慣など、どのようなことでも構いません。
カナダは壮大!それが人々のゆったりとした気持ちや思いやりに影響していると思う。UBCの学生はバスでは常にシニアや障がいがある方に席を譲る、降車の際はドライバーにお礼を言うなど本当に礼儀正しい人が多かった。またバンクーバー、特にUBC周辺は治安もよく落ち着いた街で、夏のバンクーバーは気候も良く滞在するには最適であった。地元のファーマーズマーケットでおいしい野菜や果物を売っていたり、スーパーの品ぞろえも豊富で、わくわくしながら買い物も楽しめた。
カナダで感じた負の側面は、ダウンタウンのホームレス問題。また文化の違いであろうが、カナダポストやエアカナダのストに見られるように、公共に迷惑になる時期のストライキ決行は日本のシステムに慣れた人にはビックリ!また円安も手伝ってバンクーバーの物価はかなり高く感じた。

Q7.現在、留学を検討されている大人の女性の方々へ、メッセージをお願いします。
シニアまたは社会人で留学を検討されている女性へのアドバイス。20代、30代であれば、将来へのステップアップとしての長期留学が可能かと思われます。MBAを取得する、専門知識を英語で獲得するなどの高度な留学も視野に入れるとよいでしょう。この年代の留学に関してはかなり情報があるので、ここではそれより上の年代の人に向けてのメッセージを送ります。

日本では40代、50代と年齢が上がるにつれて冒険は躊躇しがちですが、カナダ、アメリカでは何歳になっても挑戦する人に寛大です。カナダでは、大人や高齢者が大学で学ぶことが奨励されており、ブリティッシュコロンビア州では65歳以上の州居住者が大学で学ぶ際の授業料は無料です。ただ現実問題として、40代を超えるとなかなか留学自体がステップアップにつながることは難しくなるだけでなく、家族の都合などで日本を離れること自体難色を示されることが多いかと思います。しかしながら、単位習得の留学は難しくても、短期の語学留学や異文化体験を目的とした留学なら、期間の面でも予算の面でも少しハードルが下がると思います。
皆さん、仕事の有無にかかわらず、ご家庭や地域それぞれの分野で頑張ってこられた方だと思います。留学したいと思われている時点でもう一歩踏み出されています。ぜひ挑戦してみてください。後悔はしないと思いますよ。
① 留学の目的
ステップアップが可能な20代30代とは違い、シニアの留学目的は他にもあると思います。私は今回の留学は長年頑張った自分へのご褒美と位置付けました。カナダ滞在4か月の間、「65過ぎて聴講生をするなんて、このおばさん何しているの?」と好奇の目で見られたことは一度もなく、大学のキャンパスでは若者からは大学職員に間違えられるか、「なんてエネルギッシュなんだ、自分も退職後はそうありたい!」と感嘆されました。そんな目的の留学があってもよいと思っています。
② 語学力を含む事前準備
その際、留学期間や予算と同じくらいまたはそれ以上に問題となるのが語学力だと思います。正規の留学や聴講は、提出を要求される書類の準備に加え、かなりの英語力が必要となります。IELTSまたはTOEFLで一定の点数を取ることが要求されます。そういう人は準備に時間がかかると思います。できれば1年半前、最低1年前には準備を開始した方がよいでしょう。私は1年半前から準備にとりかかりました。UBCの7月からの夏期講座の正式申し込みは10月には始まりますから、それまでに必要な書類の準備と、語学力を証明する必要があります。

どこで思わぬトラブルが発生するかわからないので、早ければ早いほどよいと思います。私の場合の意外な落とし穴は、日本の大学の成績証明書が紙媒体でしかも旧姓でしか出ないことでした。大学に交渉しデジタル証明書を作ってもらい、現在の名前の人物と同一人物であるという証明をする必要があり、これに手間取りました。現在海外の大学は出願手続きもオンラインでかなり複雑になっているところが多いので、そのあたりも含め留学エージェントに相談されると安心です。

短期留学または語学留学の場合もある程度の語学力は必要かと思いますが、それを得ることが留学の目的でもあるので、今の段階で十分でなくても、躊躇せず挑戦してください。日本での準備段階で、「ラジオ講座やオンライン教材を使い自分で英語を学び直してみる」「英会話教室へ通う」などやってみるとよいでしょう。
③ 準備の相談は?
いずれにしても、文化や習慣の違い、住居面での不安がある場合がほとんどだと思いますので、経験のある方からのアドバイスがあると心強いですね。カナダ留学の場合は現地スタッフが日本人である”JPブリッジ”がとてもおすすめです。私は、一度アメリカに1年留学し、オンラインでアメリカの大学院から修士を獲得していますが、それでも今回の留学でJPブリッジの岩井さんの助けがなければ達成できなかったと思うくらい、手続きが煩雑になっていました。特に住居は日本から探すのはなかなか難しいと思われます。(海外では避けた方がより危険な地域があるのは事実です。日本にいながらそれを把握したうえでの住居探しはほとんど不可能です。)カナダ以外の国でも通常の留学、語学研修であれば相談に乗ってくれるエージェントは比較的簡単に見つかると思います

④ 帰国後は?
留学の思い出に浸りながら写真を整理してアルバムを作成したりゆったり過ごしてもよいのでは?ただ、折角得た現地でのネットワークと語学力、そのままなくしてしまうのは勿体ない!帰国後も連絡を取り合ったり、現地のニュースを英語で聞いたり、前向きに過ごせたら留学は大成功では?またの日を夢見て過ごすだけでも楽しいですよ。個人的な感想が多い文章になりましたが参考にしていただけると幸いです。ぜひ皆さんの夢を形にしてください、応援しています。




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